息子の定期試験期間だったので、ブログの更新が出来ずに日が過ぎてしまいました。
私のテストじゃないのですが、なかなか子どもの自主性に任せられずにいます。
自分の幼少期を振り返り、もう少しサポートがあれば、もう少し上手に世界と向き合えていたような気がするので、息子が自分で飛び立てるまでは、様々サポートしてやりたいと日々余計なお世話を続けています。
私は、子どもの頃から、自分の中の秩序に合わないものを理解することが本当に難しく、幼児期に十進法を理解することは簡単だったのに、小学生の時に、そろばんの9の数字で数えて次の桁に移行することをどうしても理解することが出来なかったり、
ト長調の音符を理解した後、ドの位置が変わるへ長調がどうしても理解出来ず、ピアノの先生に叱られて、しばらくレッスンに行けなくなってしまったりしました。
マッサージの専門学校に入学してからも、東洋医学の抽象的な陰陽の概念は理解できるのだけれど、経絡・経穴が、どうしても頭に入らず、同級生が次々とその分野に詳しくなっていくのを尻目に、経絡・経穴に即した治療をすることをとりあえずあきらめることにしました。
筋肉についても、解剖学的に、その起始・停止・支配神経・作用を覚えることは必須項目であるにもかかわらず、断片的な知識が頭の中でグチャグチャに配置されていて、実際的に全く使えないものでした。
仕方がないので、とりあえず、実際的に患者様の身体からわかることを基本に、身体の動きと、筋肉の状態を私なりに組み立て、その経験を蓄積していくようにしました。
それから10年が過ぎるころ、筋肉の名前も経穴(ツボのことです)も覚えられないけど、ある動作の、収縮を必要とする筋肉の場所や、”どこ"を緩めれば効果的にどこの筋肉を緩めることができるかが経験的にわかるようになってきました。
この”どこ”かは、偶然にもツボの場所と一致していました。
按摩を教えて下さった鍼灸師の先生を久しぶりに施術させていただいた時に、私のやり方が教えていただいたやり方とは変わってしまったことを残念そうにおっしゃりながらも、その場所がツボと一致していることを教えて下さったのです。
それをきっかけに、経絡・経穴・筋肉名が、私に身近なものに近づきました。
不勉強で、まだまだ、全てを覚えることは出来ていませんが、経絡・経穴が気という目に見えない流れではなく、視覚的に確認することができるある有機的な繋がりをもとに構成されていると私なりに確信を持てる部分が見えてきたからです。
しかしながら、当たり前ですが、経絡・経穴というのは、私ごときが理解しているような浅いものではなく、何千年という経験や蓄積の上にある奥深いもので、気血の流れを調整することで、内臓にまで影響を及ぼすことができるものです。
それは、西洋医学の分類とは違う12の臓腑の経脈の気血の運行があり、12の臓腑は、陰陽の6つの臓腑の組み合わせで構成されています。
これらの運行の滞りを正すことで心身のバランスを整えることができると考えられています。
その気脈の流れは、西洋医学の解剖学的に理解できるものもあれば何故これがここを通るのだろうというものもあります。
その中の一つに、胸から手に至る、太陰肺経と手から顔に至る陽明大腸経があります。
呼吸を司る肺の経脈が手に至るのは解剖学的には当然のように思います。なぜなら呼吸補助筋は上肢の動きと一致するからです。
深呼吸をする時に手を広げたら深い呼吸ができるのはそのためです。
でも大腸の動きとなると、腰・腹部の筋肉にダイレクトに影響を受ける場所ですから、手というよりは、足の筋肉の動きが影響を与えると考える方が合理的な気がします。
実際、腹痛や、下痢・便秘の主治穴は下肢に多くあります。ですから、大腸経が手から始まり、顔で終わることも、肺経と陰陽関係にあるのも私にとっては、かなり不思議なことでした。
マッサージの施術は、患者様の自覚以外に、施術中のお腹の音やゲップ、おならなどを、身体の大きな反応として注意深く観察しながら行うことで効果をはかるのですが、近頃は、上肢をうまく緩めることが出来ると、下肢を緩めた時以上に、患者様から、便意を催してきたと言われる経験が増えてきたのです。
上肢の施術中に、お腹が動き、便意の訴えを頂く度に、下肢の施術より効果があることを意外に思いながら、先人の知恵の深さに驚かされていました。
そんな中で、更衣すら困難な拘縮のひどい方をマンネリの治療ではなく、なんとか呼吸だけでもより楽にすることで、全体の可動域を拡げられないかと、肩甲骨の動きにこだわりながら治療を始めて一か月が過ぎた頃に、予想を超えた出来事がありました。もう10年近いおつきあいのある患者様の経験です。
洗面器いっぱいくらいの便が出たと訪問看護師さんから報告を受けたのです。自力排便が困難なこの方は、週に一度の浣腸で排便をコントロールされていますが、その方史上一番の量だったそうです。
たまたまかもしれませんが、肩甲骨の動きを作ることで、呼吸が深く出来て、横隔膜が動いた結果、驚くばかりの便が出たのではないかと考えました。
これが、肺経と大腸経が陰陽関係にある理由なんじゃないかと、大発見をしたような気になっています。
本当のことは、これからの臨床を積み重ねないとわかりませんが、独りウキウキその後も臨床を楽しんでいます。
私にとって経脈・経穴を理解することは簡単ではありませんでしたが、臨床を積み重ねていく中で少しずつ東洋医学的な身体の理解が深まってきたように思います。