お試しマッサージ[膝関節の人工関節置換術後に、痛みが発症した方]

今日は、ケアマネジャーさんから、膝関節の人工関節置換術後に、痛みが発症した方をご紹介頂き、お試しマッサージに訪問させていただきました。

訪問マッサージとなると、計画的・定期的な訪問となるため、手技の相性・人間的な相性を見てから決めたいというお話をよくいただきます。

私は営業トークが得意ではありません。
営業先が、迷惑そうだったり訝しげな雰囲気があるのを感じると早々に退散したくなります。

ですから、実際に体験したいという依頼は喜んでお受けいたします。

例え、それがすぐに仕事に結びつかなくても、紹介したいと思っていただけたことをありがたく思います。

今回は訴えが術後の痛みという、あまりないケースであり、訴えの場所が限定的だったので、膝の状態の確認、考えられる状況、この場で対応出来る治療をして、これからの可能性について話をさせていただきました。

人工関節は、変形した関節面を切り取り、セラミックなどの人工の関節に置き換えるものが一般的で、使い勝手が前より限定されることはあっても、痛みは消失することが多いのです。
そこに歩けないくらいの痛みがあるというのですから、一般的な全身治療は不適応だと考えました。

よく見ると、膝下数センチのところに不自然な段があります。
人工関節と下腿の接続面が少しずれているように見えます。レントゲン撮影では異常はなかったということなので、筋肉のねじれによるズレが生じているのかと思いました。

そこで、皮膚の緊張を緩め血行を良くして、”正しい”関節運動を誘導して、テーピングで軽く固定することで、痛みの軽減をはかりました。
施術直後は、痛みが軽減し、歩行が安定したと言っていただけました。

結果、ご本人・ご家族様にも大変喜んで頂き、主治医の同意もいただけたので無事、訪問を始めさせていただけることになりました。

もう少し時間をかけて全体の調整か必要かと思っています。

術後の膝の痛みの他には大きな問題のない方ですので、なんとか自立的な生活を支えたいという、ケアマネジャーさんの熱い思いでセッティングしていただけた仕事です。
この仕事は、膝のトラブルが治ればゴールです。

ご期待に添えるよう頑張りたいと思います。

いかにも”歩行困難な要介護”の方らしい景色に思わずシャッターを切りました。
玄関から洩れ出る光で野菜の栽培❣️
外出の自立が困難になるのは、心に鍵をかけられるようなことなんじゃないかと思います。この鍵は自分のしたいことを表現することに自分自身で鍵をかけてしまうように思っています。
だからこそ「様」という言葉でリスペクトの気持ちを表したくなるのです。実際に呼ぶ時は「さん」ですが。

15歳のアスリート

先日、15歳の中学生の女の子が股関節が痛いと来院されました。

知り合いの方に見てもらったら全体に重症だからきちんと治療する方がいいと言われたそうです。

慌てて病院に行くと保険治療が適応できると同意書にサインもしてあります。

私のみた感じでは、股関節に痛みはあるもののしばらく休養すれば自然に治るようには思いましたが、なるほど鍛え過ぎた脚は筋肉のバランスを少し欠いているようにも感じました。

三年後の東京オリンピックの出場を目指す彼女は、毎日の過酷な練習をこなしているのです。

若い身体は老化に向かうそれとは、何もかもが全く違います。
余計なことは極力控え、本人の治癒力を信じて、ほんの少し手助けするだけで回復することがとても多いのです。

お金の話になりますが、保険治療となると、
彼女の場合、一回の治療費は、855円になります。
855円分の治療というのは、時間にすれば、10分程度かなと思いながら、こんな若くてかわいい子が来てくれたことを考えるとさらりと終われません。
身体に触れてしまうと、時間やお金で割り切れない私自身のこだわりを抑えるのはなかなか困難なのです。プロとしては、こういうのは失格ですね。

仕方ないので、

「東京オリンピック連れて行ってやー。トレーナーでついて行くわー。」

と言いながら一時間以上治療してしまいました。
これは、仕事とというより、もう趣味の領域だと思うと気が楽になります。

そんなこんなでしばらくかわいい彼女とお付き合いが出来るかなと思います。

彼女が東京オリンピックに出場が決まれば、この場でジャジャーンと発表したいものですね❣️

心の中で腑に落ちない言葉や出来事ほど、時間をかけてわかることもあるように思います。
その時は苦しくても、旅の途上にいると思えるだけで、気持ちはかなり軽くなります。
鷹の目を忘れずに。

患者、呼び方

気がつくともうすぐ11月も終わりです。

紅葉🍁が見頃を迎えている京都の街には大勢の観光客が訪れています。
こんな京都にいて、私は仕事の移動中にみる小さなお寺や神社、大学や街路樹の紅葉に心癒される毎日です。

先日、知り合いの方が「患者様」という表現についての’17.10.12 週刊新潮の記事を紹介して下さいました。
『医の中の蛙』里見清一氏の記事です。


「患者さま」何様
と題されたその記事には、
患者さま撲滅運動を始めて、この汚らしい言葉と戦って10年近くになるが、戦局は芳しくない。と始まります。

この言葉は、2001年に厚生労働省が「患者の呼称は『さま』を付するのを基本とすべし」という通達に始まったそうです。本来の通達は、「患者の◯◯さま」という趣旨だったのが「患者さま」として広がったのだそうです。

そもそも「患者」という言葉自体が悪い印象のある言葉なので、「さま」をつけても敬うどころかおちょくったようにしかならない。

その上に、「患者さま」とは「お客様」の意味になるが、「患者」は、例えお金を払わなくても患者であり、消費者として扱うのは、志をもつ医療者としておかしい。

また、倫理的にもおかしい。医療者は、有限な医療資源をどう振り分けるかの判断をしなければならず、そこに「お客様」の出番はない。

それから、心理的にも「客扱い」された患者自身が「客」と勘違いし、医療に対する不満をぶちまけたり、治療に対する主体性を失う「客」になることは、本人が一番困ることになる。

のだそうです。
でも若い医療者の中にはこの言葉を当然のものとして受け入れている現実があるのだとか。
それでも里見清一氏は、「患者さま」を受け入れがたく奮闘されているようです。

ここに書かれていることは、全てが納得がいく、私の言葉遣いを考え直す必要を感じさせてくれるものです。

でも、老人医療の真っ只中にいる私は、
「どうやっても助からない」患者の訴えの多くが加齢によるものであるが故に、医療の対象になりにくく、でも実際にはビジネスの有用な道具になっている現実の流れに棹差すためにもあえて「患者様」と表現してきました。

もちろんそれは私自身への戒めも込めてのことです。

しかしながら、この文章に出会ったことだけでなく、他の様々な要因からも、訪問マッサージについて、自分自身の関わり・治療の軸・表現の仕方について、もう一度考え直さなければいけない時期に来ているのかなと思う今日この頃です。

ただ、なかなかいい表現が見つからないんですよね🤔

松浦先生の勉強会

サントリーのバレーボールチームのトレーナーとしての長年の実績をお持ちの松浦先生の講演会に参加してきました。参加者は100人近かったです。

20年前私が学生だった時、すでに活躍されていた松浦先生の手技については、専門学校の授業でも紹介・説明を受けていました。当時は、私自身がまだまだ未熟だったため、全くピンときませんでした。

学生の頃には、すでに訪問マッサージ治療院で助手のアルバイトをしていましたし、機能訓練をメインにしか考えられなかったからだと思います。またスポーツトレーナーに興味が持てなかったこともあり、全国的に名を馳せていらっしゃる先生がいらっしゃる程度の認識しかできませんでした。

そんな私が、先生の勉強会に参加させていただいたのですが、
本で読んだり人から聞いたりインターネットで見聞きする事と、実際の先生のお話をうかがい手技を見せていただく事は全く違いました。あまりの素晴らしい手つきにすぐに魅力されてしまいました。

今回は、試合前のウォームアップのマッサージを教えていただきました。身体を暖かく動きやすく整えていくものです。

先生の治療される場所や流れは、御経験から考えだされた先生のオリジナルなものでしたが、揉み摩り押すという手技は、按摩の手技を中心にした治療でした。

私の師匠は、ホテルなどで按摩をされてきた方です。いわゆる慰安としての按摩です。
師匠からは、按摩という手技の持つ繊細さや奥深さを教えていただきました。
按摩は日本で発展してきた手技で、日本人の細くて小さな身体を治療するのに向いている、およそ身体を道具にして揉みほぐすことができる全てを兼ね備えているものだと教わりました。
ですから私は、按摩を治療とは別のように表現したり、指圧こそ手技療法の王道のように言われることを好みません。

そんなわけで、松浦先生が按摩の手技を中心に治療されているのを見て大変驚きました。やっぱり按摩という手技の持つ力はすごいんだと嬉しくなりました。

先生の手つきはとにかく素晴らしいとしかいいようがなく、澱みなく動き続け、全体を指先や手掌で探り治療されます。その御様子から、先生の集中力のすごさと経験の深さを感じることができました。

松浦先生のご指導の下で、参加した全員が二人一組で実技を行い、
私は、実技では、学生時代に松浦先生と同級生だった先生にお願いして組んでいただきました。

どんどんほぐれていく身体を味わいながら、手技療法って本当に有難いものだなぁとしみじみ感じた時間となりました。

先輩の治療師の方々の治療を味わう毎に、私がまだまだ井の中の蛙であることを思い知らされます。しかし、それは同時にまだまだ進むべき先があることを知る、とても有難い時間であります。

松浦先生の素晴らしい集中力とそれを後進に伝える表現力・技術力に触発され、私ももっと緻密に確実に結果を出していけるようにしたいなとしみじみ思いました。

まだまだ未熟な私ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。

ここ数年は、松浦先生自身の視力に問題があるそうで、人に教えることを控えていらっしゃるそうです。
ですが、だからこそ視力障害のある施術師の方々にも触覚で伝えるご指導をされていました。
このような気遣いも含めて本当に素晴らしい先生だと思いました。

マッサージの実技漬けの一日

11月6日の日曜日に、関西運動器障害研究会(KATA)の会長をされている松浦先生の勉強会に参加させていただきました。

この企画は、鍼灸マッサージの専門学校生に、より専門的な知識を学んでもらうためのサポートと、卒業後の資格者の支援・交流の一環として、京都府鍼灸マッサージ師会主催で開かれたものでした。

講演会に先立ち、午前中は資格者と学生の手技交流会を行い、午後からは、松浦先生の実技を中心とした講演会というプログラム。
参加者はマッサージの実技漬けの一日を過ごしました。

実技の勉強会というのは、お互いの身体を練習台にして手技を学びます。
私たちは、朝10時から夕方4時まで一日中揉み・揉まれ続けたことになります。

マッサージという手技の身体に直接触れるその影響力は決して小さくなく、一日中揉み続ける以上に、一日中揉まれ続けるのは、とても疲れてしまうことなのです。
そのため翌朝には、ほぐされすぎた身体はヘロヘロで、身動きできないくらいでした。

このまま一日中横になっていられたら、溜まった疲労がかなり回復するのだろうなぁと思いながら、動かない身体に鞭打って寝床から這いだしました。

マッサージというのは、慰安とかリラクゼーションとか、医学的なエビデンスがないとか、とかく医療の世界からは冷たい評価を受けがちですが、スポーツの世界では、トップアスリートにとっては、なくてはならないものに位置づけられているように思います。

筋肉の疲労を取り除き、最高のパフォーマンスを発揮するのに、筋肉のケアは欠かせないということなのです。
ですから、本当はトップアスリートでなくても、一般の生活もその暮らしを支えるのは、筋肉なので、そのコンディションがいいということは、体調がいい、つまり健康を支える基礎になるということだと思います。

手技交流会の時に学生さんから、
「鍼灸はクセになるからしたくないと言われたのですが、本当ですか?」と質問をうけました。

その通りだと思います。
疲労の蓄積を取り除き、高いレベルでコンディショニングできてしまうと、疲労の蓄積で、筋肉が鉛みたいに動きを制限してくることを自覚出来るようになるのです。
それで、また少し若返る治療を身体が必要としてしまう、つまりクセになるのじゃないかと思います。

でも、お酒や痛み止めの様な薬に頼ってコンディションを整えたり、ごまかしたりするより、鍼灸マッサージに頼っていただける方が身体に優しいし、いいことじゃないんじゃないかと思います。

是非ともクセになってもらいたいものです。

こんな話をしながら、学生さんたちと楽しい交流の時間を過ごすことが出来たように思います。

マッサージの真髄を言葉でうまく説明するのは、本当に難しいのです。

言葉で伝えるのは、簡単ですが、それがどのようなものなのかは、実際に受けてみないとわからないからです。
またその体得は、言葉による理解ではなく、感覚なんじゃないかと思うからです。
それで、短時間で、いろんな人の施術を体験できるこの様な企画は、本当に大切で、意味のあることじゃないかと思います。

これから資格者になる方々が、身体で感じて、マッサージ師という仕事に希望を持って取り組んで行ける明日への活力の一助になれたら嬉しいです。

午後から、受けた松浦先生の勉強会のご報告は次回のブログに。

先生のお話を拝聴した今週の私は、より、繊細に注意深く、そしてマッサージという手技に自信を持って取り組めたと思います。

乞うご期待!です。よろしくお願いします。

京都仏眼鍼灸理療専門学校で行われました。
ベッドが整えられていて、勉強会に最適でした。
どの資格者の先生方も額に汗して、学生さんに指導施術されていました。

朝日新聞の在宅医療記事にマッサージ師も

朝日新聞 be on Saturday2017年11月11日号
知っ得、なっ得の記事「在宅医療を受ける:4 医師や看護師以外の職種も関わるの?」
マッサージ師も紹介されています!

http://www.asahi.com/articles/DA3S13220448.html

(登録すると無料で記事が読めますので、ぜひ)

横浜の訪問看護さんが記事に協力されているようです。横浜の先生方の努力の賜物ですね。

患者様、96歳のお誕生日

先日、96歳のお誕生日を迎えられた患者様がいらっしゃいます。

この方は、80歳の時に脳梗塞を発症され、動くのだけれど力が上手く入らない左不全麻痺になられています。
でも、食事や更衣など、ご自分のことは大体自分で出来ます。
家の中では、歩行車を使ってトイレにも行かれますし、コンピュータの電源をご自分で入れてゲームを楽しまれます。
それから、一番多くの時間を、ご家族様が図書館から借りて来られた、本を読んで過ごしていらっしゃいます。いつ伺っても、前とは違う本を読んでいらっしゃるのです。

若い頃に読書家であっても、齢を重ねても、そのまま読書家という人はそう多くはいらっしゃらないように思います。本を読むということは、とても集中力を必要とするので、その気力が湧いてこないからなんじゃないかと思っています。

ても、この方は、「若い頃は、読みたくても時間がなかったから、今ようやく読める時間が出来た」と毎日、読書を楽しんでいらっしゃいます。

家庭の事情で、親戚の家で大きくなられたそうで、「人の顔色ばかり見てきました」とおっしゃる通り、96歳にもなれば自分のことで精一杯になって当たり前かと思いますが、そんなことは全くなくて、今も周りに気をつかってばかりで、私にも本当に気を使って下さるので、私はいつも恐縮してばかりいます。

この患者様の96歳のお誕生日を、子ども・孫・ひ孫様たちの四世代で外食をしてお祝いされたそうです。
そして96年の歳月についてお伺いしたら、「96年間、本当にたくさんの方にお世話になってきました」と話して下さいました。

今までもご高齢の方々のお誕生日をお祝いすることはありましたが、このような言葉が自然に出て来るのを耳にしたのは初めてです。
自分の過ぎた過去の苦労や今の生活ではなく、周りの人を思う気持ちが自然に出て来ることが、この患者様の普段のご様子から当然のことに思えましたし、御苦労の多かった人生だからこその言葉だと思いました。
そして、私が、仕事で関わらせていただけているありがたさに、私自身も本当に幸せな気持ちになりました。

「家族に迷惑をかけることを考えると、80で脳梗塞を起こした時に死んでたら良かったと思うこともあります」とおっしゃってましたが、この患者様がこの方らしく天寿を全うしていただけるよう、機能が維持出来るように関わらせていただけたら、私にとっても本当に幸せなことだと思います。

この患者様が手先のリハビリで折ったものをいただきました。色使いが素敵です。

11/5(日)手技交流会&スポーツマッサージセミナー

今回は、わたしの母校である仏眼理療専門学校で行われる京都府鍼灸マッサージ師会の催し物のご案内です。

午前中は、第5回目になる手技交流会が行われます。
受付9:30 交流会 10:00-12:00
自分の手技にまだまだ自信の持てない方も、そろそろ自分のやり方が固まり自信が持てるようになった方も、すっかりベテランになられた方も、どうぞお越し下さいませ。
きっと新しい発見や、何かしらのヒントが得られたり、また治療を受ける側の気持ちになって次への活力の元になると思います。
私は、自分で治療院を開業した五年前にこの手技交流会に参加したのが私の新しい展開の全ての始まりになりました。

そして午後からは第1回 スポーツマッサージ・体験セミナーが開かれます。
受付 12:00 体験セミナー 13:00 – 16:00
講師は、サントリーのバレーボールのトレーナーを長年勤めてこられ松浦英世先生です。

松浦英世プロフィール | 松浦英世の公式ブログ

実践に基づいた先生のお話を聞くことができる貴重な機会です。

どうぞみなさまの御参加をお待ちしております。

東洋療法推進大会 仲泊聡先生の特別講演会

9月24日に東洋療法推進大会が京都で開かれました。

大会のテーマは、
先端医療と伝統医療の融合〜未来への期待
として、
特別講演に、
「iPS細胞による網膜再生とロービジョンケア」と題して、理化学研究所 網膜再生医療研究開発プロジェクトの 仲泊聡先生がお話して下さいました。

『網膜は身体の外に突出している脳の1部と称され、その比較的単純な構築と体表面に突出している点が扱いやすく中枢神経のモデルとして使用されます。
最近まで障害されると再生しないと思われていた成体哺乳類網膜が、少なくとも傷害時に網膜神経細胞を生み出す力を持っているらしいことがわかってきました。このことは、成体網膜も神経回路網を再構築する能力を秘めているのかもしれないと期待させます。
この力を使って網膜の中からあるいは外から細胞を移植することによって疾患で失われた網膜機能を再生させたいこれが我々の目標です。しっかりした基礎と臨床の研究を積み重ね両者を踏まえた網膜再生研究を行いたいと思っています。』

これは先生が書かれた講演紹介の文章です。

網膜再生の話はとても専門的なので、少し長くなりますが、先生のレジュメをそのまま引用させていただきます。

『最近まで障害されると再生しないと思われていた網膜をiPS細胞を使って再生する試みが始まっています。
我々の研究チームが、現在行っている網膜移植治療はiPS細胞から作った網膜色素上皮と言う細胞を加齢黄斑変性という疾患の患者さんの目に手術的に植えるものです。2014年9月12日に世界で初めてこの治療を受けた患者さんの経過は順調で、現在さらに改良を施して別の患者さんへの治療が行われています。』

加齢黄斑変性というのは、見ようと焦点を当てたところが暗く見えたり、歪んで見える疾患で、網膜の中心部分である黄斑部が変性するのだそうです。
iPS細胞による再生治療では、網膜の最も上にある網膜色素上皮細胞を再生し、シート状に培養したものを移植するのだそうです。

臨床の実際にこの疾患が選ばれたのは、iPS細胞の移植は、癌化する危険性を伴うため、過去に癌化したことのないこの網膜色素上皮細胞が選ばれたのだそうです。

初めてのiPS細胞の人への移植から2年半が経過し、経過観察の要点は、癌化していないか、ということと、視力の向上を期待しているということでした。

現在の評価としては、

・拒否反応は起こっておらず、癌化していない。
・視力は検査では変わりないが、時に見える時もある。
・移植以前はVGSという注射により、視力を維持してきており、それをしないと検査で良くない結果を得たが、移植後は一度もその注射をしていないが悪化していない。
・形状的には移植以前より正常に近くなっている。
・移植片のある視細胞が働くようになってきている
ということで、治療としては今のところ大成功という評価なのだそうです。

しかしながら、このように再生医療を追求して行くことは、障害自体を否定していくことに繋がるのではないかと考えていると仲泊先生はおっしゃいます。
視力障害がある限りそれは良くないことで、視力障害の方の未来は見えるようになる未来が一番いいことだという考えに繋がるというのです。

見えないということにおける未来にも様々な選択肢・希望の持てる未来を提示していくことが大切なのだと。
また、再生医療が進めば、視力障害はなくなるかというとそうではなく、

『全く見えなかった人がわずかに見えるようになると言う事は十分可能ですが、普通の視力に戻る事はまだまだ当分実現しないと考えられています。この不十分な見え方により生活にまだ支障を残している状態を私たちはロービジョンと呼んでいます。

しかし、その違いは大きく、また得られたロービジョンをいかに生活の効率改善に結びつけるかということは、術後の患者さんの生活の質に大きく関わります。われわれは眼球に修正を加えるだけでなく情報提供と訓練によっても視覚障害者の社会参加を促すことを目指しています。本年12月1日に開業予定の神戸アイセンターでは、研究・眼科臨床はもとより二階のビジョンパークで視覚障害者支援のための啓発活動を行う予定です。』

とロービジョンケアについて、本当に熱く語って下さいました。単なる眼球の治療に終わらず、サロンのようなスペースを作り、情報提供・情報交換の場の提供をして行きたい。中でも視覚障害者の就労支援に特に力を注いで行きたいと考えていらっしゃるということでした。

それは

『就労は、視覚障害によって失うことの多い、所得、所属、生きがいの全てを同時に取り戻す可能性を秘めています。これを実現するには、見えない、見えにくいことで苦手となった、移動、読字、表情把握を何らかの方法でカバーしする必要があります。これまで、そのような状況に置かれた視覚障害者を支えてきた就労支援の代表が東洋療法であるあんま・マッサージ、鍼灸であるといえます。』
ということなのだそうです。

ほとんどが先生のレジュメからの引用になりました。

私が短くまとめるにはあまりに失礼な気がするくらい大きな情熱で、今年12月に開業予定の神戸アイセンターについて話して下さいましたので、そのまま引用させていただきました。

世界中が注目し、その権益を手にするために世界中が躍起になっている医療の最先端に関わり活躍されている先生が、目の前の患者様の奪われた未来や希望を支援する方法を考え、実行に移されているという事実に言葉を失うくらい驚きました。
iPS細胞の再生医療について、もっと具体的に聞きたくて質問まで考えていた私の頭をガツンとやられました。

目の前の人を幸せに出来るのは、本当は科学技術の進歩ではなく、それを支える心のありようなのだとしみじみ考えさせられる素晴らしいお話でした。

私たちマッサージ師は、患者様から、医師の診察や薬よりも、一番大切な時間だと言って頂けることがあります。
置かれている立場の厳しさがついつい頭をよぎり有り難いお言葉だけど、本当かなぁと素直に受け止められないこともよくあります。
でもiPS細胞の移植に携わる医師であっても、その治療を施しているという事実より患者様の実際的な問題の解決に向けたサポートを大切にしたいと考えられるのですから、実際的な力になれるということをもっと誇りに感じ、患者様の感謝の言葉を大切に受け取らなきゃいけないと深く感じさせていただいたお話でした。
目の前の問題解決に少しでも力になれる自分の手技を大切にし、益々精進したいと思います。
また、視覚障害者の就労支援の大きな一つとして保護されてきた我が業に理解を持ち、自分の果たせる役割を果たして行きたいと思いました。

仲泊先生、それから大会の準備をして下さった鍼灸マッサージ師の先生方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

また、いつか一度は必ず、神戸アイセンターを訪れたいと思います。

夏に書いた会報記事「健康のために、マッサージで身体を整える」

夏の太陽ヶ丘プールサイドでのマッサージブース出店の報告を京都府鍼灸マッサージ師会の会報に書きました。
会報が出てから転載する予定がうっかりして、遅い報告です。
季節は秋になってしまいましたが、我ながら良い文章が書けたなと思うので読んでいただけたらうれしいです。

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8月6日日曜日の太陽ヶ丘プールサイドのマッサージブースの取り組みに参加してきました。

台風前の猛暑の中、日除けのテントの下には、4台のベッドに、男性5人・女性3人の施術者と、受け付けやベッドメイキングの手伝いに来てくださった3人のサポーターを合わせ、総勢11人が、11時の開始前から、患者様を今か今かとまちかまえていました。

昨年は、開始前から次々と患者様が来てくださったので、今年はもっと多いのではと思っていたのです。

ところが、余りの暑さのせいか誰も来て下さいません…仕方がないから、スタッフの一人をサクラにマッサージを始めてすぐに一人目の方が来て下さいました。
そこからは、待ち人数を2〜3人のまま、ほぼ途切れることなく、3時の終了を迎えることができました。

参加する私としては、自分が治療をしながら、他の先生方の治療を見られることが一番の楽しみです。
各々の先生方のアプローチに、患者様が様々な反応を示されるのを見ることが出来るのも大きな魅力です。
また、普段は一対一が基本の仕事なので、同業の方と過ごす時間は、待ち時間さえ心地よい会話の時間に思えました。

来てくださった患者様からすると、プールの付き添いの合間にマッサージをしてもらえるというのが魅力のようでした。
その上に、受けてみたら予想外に上手かったと、お友達や他のご家族が後から来て下さることもあり、無資格者の多い街のリラクゼーションマッサージとは違う本物のマッサージを体験していただけたのではないかと思います。

そして、この取り組みで一番大切なことは、この取り組みが、単なるリラクゼーションマッサージという位置づけで、プールサイドでのサービスとして、企画されているわけではないということです。

この企画は、山城運動公園が、健康推進事業の一環として位置づけて下さっているのです。

健康にために、スポーツを通して、身体を使う。
そして、
健康のために、マッサージで身体を整え、足りない筋力や、必要な体操をアドバイスをしてもらえる。
そして、アドバイスをもとに身体を鍛える。

これをセットで提供することで、マッサージとスポーツの相互関係が形になり、本当に意味のある企画になると考えていて下さっているようです。

これは、マッサージ師によるマッサージが、予防医学として、またきちんと対策をアドバイスできる専門家として評価をいただいているからこその位置づけだと思います。

この期待を裏切ることなく、この取り組みに応えていきたいと心から思いました。
そして、願わくば、考えて下さっている以上の専門性を持って、この企画を実行して行けたらと思います。

この取り組みの先には、超高齢化社会を乗り切る大いなる知恵が蓄積できて行くのではないかと、夢が大きく広がる一日となりました。
最終的には40名の受療者がありました。

企画の全てを準備して下さった北田 先生を初め、太陽ヶ丘の職員の方々に厚く御礼申し上げます。