呪縛からの解放3〜コリはほぐすもの・関節は伸ばすもの、リハビリはゴールを設定して近づくもの⁉️⁉️

呪縛その2 何のために関節は拘縮する?

寝たきりになると、関節が硬くなり、手足が曲がり、オムツ交換も更衣も大変になってしまいます。動かなくなると関節が硬くなるのは骨折後のギブス固定で関節が固まってしまうのと同じことです。

ところが、寝たきりの患者さんがみんな同じような形で関節拘縮が進むかといえば必ずしもそうとも言えないのです。

麻痺のあるなしだけではなく、元気な時の筋肉のつき方、性格、寝る時の姿勢などが関係しているのかなと考えていますが、本当のところの科学的客観的データはないのではと思っています。

因みに脳卒中などの後遺症の痙性麻痺(ケイセイマヒ、硬く力が入って意図的に動かすのが難しい状態)の関節拘縮の形も、多くの人は曲がってしまう形に力が入るのですが、中には突っ張ってしまう形になる人もいらっしゃいます。不思議に思ってお医者さんに尋ねたことがありますが、理由はわからないとおっしゃっていました。

人体というのは、身体の中で何か起きても、二重、三重に張り巡らされた防衛策があり、少々のことでは異変をきたさないシステムを持っていることを考えると、廃用性の関節拘縮や痙性麻痺にもその害だけではなく、身体の深淵な考えがあるのではないかと私は思うのです。

この関節拘縮や痙性麻痺というのは正常な筋肉運動ができないから起きているわけですから、正常な筋肉運動をするというのが、一番の治療法であることに間違いはありません。

しかしその正常な筋肉運動が不可能という前提で、関節が硬くならなかったらどうなるかを考えてみます。

手や脚というのは相当に重くて、片麻痺の人はその重みを支えきれず肩が抜けそうになることもよくあるのですが、長くぶら下がってしまえば、抜けそうではなくて、本当に抜けてしまうように思います。また脚が曲がらずに力も入らなくてブラブラしていると寝返りをさせたくらいで足が絡まり頸部(付け根)が骨折したとう例が実際にあります。
また、力のない長い手脚が垂れ下がっている状態では、体幹もその重みのために呼吸・消化・排泄などの内臓の機能にもより大きな負担を与えるのではないかと考えます。

こう考えると寝たきりになり、関節が拘縮するのは身体がそれを必要としているのですから、無理に伸ばそうとすると、身体は必死になって緊張を増大させ、身を守ろうとするのは自然なことのように思えます。

それでも関節拘縮が、どんどん進むと、オムツ交換や更衣も容易にできなくなり、呼吸・消化・排泄といった生命活動にも支障をきたしてきますから、身体の防御反応(手足を縮める)が、生命活動に支障をきたさないところに落ちつくようにコンディショニングするのが、機能訓練の大切なところかなと考えています。

私の経験では、手も足も出ない状態(つまり寝たきり)に優しくない力で、関節を伸ばされたり、車椅子への移乗時に乱暴に持ち運ばれるなど恐怖心を抱かせることは、筋緊張を増大させ関節拘縮を加速させていくように考えます。

ですから、介護する人が無理やりな力で介護しなくてもいいような柔らかさを保つこともまた大切な指標かと考えています。

介護するのに、困難が伴うまでに硬くなってしまうと毎日のオムツ交換や車椅子への移乗のたびに緊張されるので、関節拘縮の改善以前に緊張を緩和することしかできず、その改善はとても困難になってしまいます。

この関節拘縮の状態と身体が緊張して力が抜けない状態とは明らかに違うのですが、この違いをわからないで、とにかく関節を伸ばしてしまうということもあるのかと思います。

例えば、

何度かの脳梗塞の後、寝たきりになり、在宅生活を送ってきたけれど、四肢の拘縮が進み、唾液をむせるようになり、床ずれや巻き爪からの感染症を起こすようになってきたので、マッサージに入って欲しいという依頼を頂いた仕事があります。

皮膚の緊張を取り、筋膜の緊張を改善し、萎縮した筋肉を少しずつ伸ばしていけば、普通の手足のようにはなりませんが、リラックスして寝ていただけるようになっていました。

依頼を頂いた理由もクリアして、唾液でむせることもほぼなく、皮膚トラブルもなく、楽々とはいきませんが更衣もそれほど困難を伴わずにできるようになりました。
こうなると後は日々進む小さな筋萎縮を改善し、緊張を緩和してあげれば大きく変化することなく過ごしていただけます。

ところでこの方は、家族さんの休息のために、年二回、二週間くらい入院されます。その病院はリハビリにとても熱心な病院ですから、毎日リハビリをしていただけるように聞いています。

私の在宅での訪問は週に2回ですから、さぞかし関節拘縮が改善されるかと思うのがフツウではないかと思いますが、足はそうでもないのですが、肩は指を入れることも難しいくらいにカチカチになって帰って来られます。

在宅と違って、オムツ交換などがソフトでなく恐怖心を与えているのかもしれませんが、全体的な緊張がさほど強くなく、上肢帯(肩まわり)の緊張が特に強いことを考えると、多分曲がった手を毎日のリハビリで伸ばしてもらった結果なのかなと考えています。

わずか二週間の入院で、入院前より退院時の方が身体が緊張でカチカチになってしまっているのですが、関節拘縮が進んだというより、筋緊張が高まっているのです。

それで、退院された後にまず私がすることは、「もう大丈夫、嫌なことはしませんよ」と話しかけながらリラックスしていただくことです。

すると、すーっと緊張が抜けて身体全体が柔らかくなっていくのです。

科学的客観的なデータがないマッサージ師の、主観的直観的考えに基づいた考えなのですが、リハビリの先生が、必要な柔らかさの確保ということではなく、関節は伸ばさなければならないという呪いにかかっていらっしゃるのではないでしょうか。

この病院のリハビリの先生は本当に一生懸命で評判もいいのです。だから一生懸命に関節拘縮を伸ばされているのではないかと思うのです。

機能訓練やリハビリテーションというのは一体何のために誰のためのものなのかを考えざるを得ない出来事なのかなと思います。

次回は関節拘縮だけじゃなく、慢性期老人・障害者の機能訓練全般にについて考えたいと思います。

ご意見お待ちしております。


筋緊張が高いと呼吸すら思うようにできません。そんな時、手の重みだけで呼吸を助けるくらいの弱い力で十分なのです、

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