夢枕獏著「陰陽師」シリーズに登場する安部晴明と、その友・源博雅朝臣との会話に「呪(しゅ)」とは何かというのがあり、「呪とはな、ようするに、ものを縛ることよ」「ものの根本的な在様(ありよう)を縛るというのは、名だぞ」と安部晴明が応えるくだりがあります。
知らず知らずにある考えを前提に物事を進めてしまう態度自体が「呪い」というものかと思うのです。
最近、一人の患者さんに他の職種の方と「機能訓練」を共に担うという仕事が増えてきました。しかし残念ながら、連携がなかなかうまくいかないことの方が多いように感じています。
先日も、患者さんから、「安井さんは、障害者の気持ちをよくわかっている。マッサージが一番役に立っている」というようなことを言っていただきました。とてもうれしく有り難い言葉ですが、マッサージだけが独立して一番と思われるよりも、共に担う職種の方々の連携があってこそと思っていただけるほうがいいのです。それぞれの仕事において同じ方向を向き、協力しながら関わることができたら、患者さんは百倍お得になるのだと思います。
うまく連携が取れない理由に、マッサージ師は医療知識が少なく、コリを揉んでほぐしているばかりで、リハビリ的な関わりができないからと考えることが多いかもしれません。これは「呪い」のようなものかも、と考えるようになりました。
揉んで貰えば気持ちよくて、リハビリはしんどくて痛いこともあるので、患者さんがマッサージを好むのは当たり前だけれど、それを医療として認められない。故に保険適応外で、チームを組めないと考えている人もいるかもしれません。
なぜマッサージ師が医療保険から締め出されて、理学療法士や看護師、機能訓練指導員の関わりは大切だと思うのか、実際のところは、私にはわかりません。
反論したいことはいっぱいありますが、話が噛み合うのか、私の言うことを聞いてくれるのか、言うだけ無駄な気がして、いままでは話すことを諦めてきました。
患者さんの私への評価が、「どうやら、マッサージがうまいらしい。人との関わりがソフトだから、関係を作りにくい患者さんを任せてもなんとかやってくれる」となれば、そこを評価されて、仕事を紹介していただけているなら、もうそれで十分だと思ってきました。しかし、この頃増えてきた、他職種の方と機能訓練を共有することで、マッサージ師はもちろん、他の職種の方の多くがこの「呪い」にとらわれているのではないか、この呪いから解き放たれないと、高齢者や障害者といった「治る」ことのない状態に関わることは、その効果より弊害が大きいのではないと思うようになりました。
できましたら、わたしの拙い文章、考えを批判し、私を新たなステージに導いてくださる意見をいただけることを期待して、私の考えを発信してみようと思います。
一面的で傲慢な理解である場合もあるかもしれません。是非とも批判していただけることをお待ちしております。
長いので、シリーズにしようと思います。今回は導入だけ。