マスミさんは息子と二人暮らしの80歳の女性。脳卒中の後遺症で左上下肢の不全麻痺があります。
歩く練習はするけど、左上肢の訓練はしないし、麻痺で浮腫がひどいので、せめて浮腫の改善をというケアマネジャーからの依頼で訪問を開始してから3年がたとうとしています。
脳卒中の後遺症の麻痺がある場合、多くは屈筋と伸筋のバランスが悪いせいで、筋膜が内旋し、結果浮腫が目立ち、それが余計に麻痺の回復を遅らせてしまいます。
マスミさんも例外ではなく、筋膜の内旋のリリースを行なった後浮腫はほぼ消失しました。それから彼女は、自分のことくらい自分でしたいとほとんど実用的ではなかった左手を使い洗濯物を干し、押さえることでなんとか食べていたヨーグルトを持って食べられるようにまで回復を勝ち取って来られました。
そんな彼女が、今日はなんとか親指と人差し指で物をつまめるように練習をしている。動かないから右手をみて、同じように動かすつもりでしていると、上手につまむ様子を見せて下さいました。
ミラーボックスというリハビリ(*)があります。箱のなかに斜めに鏡が入っていて、その中に手を入れて、麻痺のない手の動きを鏡に写すことで、脳が鏡にうつった麻痺のない手を、麻痺の手と勘違いして麻痺を回復させるやり方です。
彼女は自分でそのやり方と同じことを考え出してさらに麻痺を回復させていらっしゃるのです。
仕事なので、患者さんよりいろいろなことを知っていたり、経験を積んでいたりします。でも、そのことが自分の中で勝手なゴールを作り出したり、この人には無理と決めつけてしまったりすることがあります。
患者さんの諦めきれない気持ちに、応えきれない技術でどう応えていくか、生活に支障をきたさないようにどう関わるか、反省させられる出来事が続いています。
マスミさんの回復ぶりをみて、自分勝手なやり方をまた反省させられました。
できること、できないこと。できなくても共に努力して見る価値のあること。再考しながらまた明日も仕事をしようと思います。
(*)ミラーボックスが具体的にどんなものか、「ミラーボックス リハビリ」という言葉で画像を検索してみてください。どんなリハビリかわかります。
例えばこちらのサイトにも画像があります ↓