50代男性。神経難病により、末梢神経炎を発症、歩行不可、トランスファーなど起居動作自立。だが上下肢体幹のコントロール不良。上肢筋力低下顕著、巧緻性低下。独居。進行性らしいが、現在は落ち着いている様子。
三年前から訪問を始めました。とにかく肩が凝って辛い、手足が重い。鍼灸も試したけどどうにもならない。治ることは考えられないけどせめて楽にしてほしいという依頼でした。
力がうまく入らずある力を必死で使う場合、力を抜くことがうまく出来ず、手足はどんどん内旋位になります。皮膚がよじれて元に戻らなくなるのです。女性ならパンストがよじれたら足を動かしにくくなる感じを想像してもらったらわかると思います。(男性だとタイツ(?))。筋膜というのはパンストのように一つ一つの筋肉だけでなく全体をも包みこんでいます。そして、身体がスムーズに動いていると力の抜け具合に合わせて筋膜も元に戻るのですが、力が抜けないとどんどん戻らなくなるのです。同じ動作を繰り返す場合もこのようなことが起きやすいです。麻痺などがあり、伸筋と屈筋のバランスが崩れている場合は、ほぼ内旋位になってしまっています。
彼の場合もそうでした。これを健康に近い状態に戻すことはそう難しいことではありません。麻痺などの神経系の異常を治療するわけではないからです。
そして治療開始から数ヶ月後には、彼の口から「全く期待していなかったマッサージがこんなに効果があったなんて」という言葉をいただけるくらい身体がスムーズに動き、起き上がりや立ち上がり動作が安定するようになって下さいました。
それから彼自身はどんな姿でもいい、とにかく歩きたいと、プールに通ったり、訪問リハビリの先生に四点歩行器での歩行訓練を続けたりされています。が、独歩(介助なしで歩くこと)に一番必要な重心を定めることが出来ません。腰が左右にぶれたり、足が出過ぎたり、緊張すると無意識につま先立ちになったりしてしまうのです。
この先の道のりは私にはわからないことが多すぎて、リハビリの先生に任せてきました。しかし昨年、鈴木先生の講演会(1/8のブログ参照)で解剖学的に解決出来ることをきちんと積み重ねていけば、神経系統の疾患も効果が得られるという話を聞いて以来、私にも、もう少し出来ることがあるかもしれないと考え始めました。
長年の歩けない暮らしで、見た目以上に筋萎縮、関節拘縮が進行しているのは確かです。可動性を正常に近い状態まで作っていけば、もう少しコントロールが可能になるかもしれないと考えています。
ご本人にも伝え、立位訓練を増やしてもらいました。下肢後面から腰部に至る可動域を拡大するためです。座位でおじきをする訓練もお願いしました。
1か月足らずの時間ですが、少し光明が見えている部分もあります。まだまだ道のりは長い気がします。でも今年中にはなんとかならないかなと思っています。ここでいい報告が出来たらうれしいなと思います。
途中で投げ出さないようブログに書きました。