「人に働かせて、自分は動かんと金儲けする人は嫌いや。」
この間の私のトラブルを見ていたように患者さんがこうおっしゃいます。
「私のお父さんは、山口県の萩の出身で、ちょっと頭が良かったんや。
けど、頭がいい人というのは、自分が働かんと、人をアゴで使って金儲けしようとするんやなぁ。
私は、自分がしんどい目して稼ぐのが好きやわ。」
(えー!社長夫人なのに、楽してお金儲けする人が嫌いなんだ‼と私は意外な発言にびっくりしました)
「私は、75まで働いたで。
若い子もいっぱい使った。京大を出たような子も働きに来たけど、そういう頭のいい子は時間が来たら、片付けもしないでサッサと帰っていく。あんなんでは何のための勉強かわからへんなぁ。一生懸命真面目に働いて親を楽にさせてあげようってそんな気がないんやなぁ。
あんたは、75までは働ける。あんたなら出来る。頑張りや」
と言って下さるこの患者さんは、大正15年生まれで、京都の中央市場の卸会社の社長の奥様として会社を切り盛りしてこられた方です。
この方は大正生まれとは思えない自由な生き方をしてこられたようです。
まだ一ドル360円の時代に家族でハワイで年越しをしたり、(夫ではなく)旅行仲間と世界中を旅行して回ったといいます。
また、まだ二十代のころには、
富山県は日本で一番お金持ちが多いと聞いて、日本一のお金持ちの多いところを見に行きたくなって一人で行ったんだそうです。行ってみるとそこは、大きな区画整理をした田んぼが一面に広がっていて、お金を貯めるためには一番大切なお米を育てているからなんだと得心して帰って来たのだそうです。
私は、この方の「古さ」と「自由」が絶妙に組み合わさった考え方や生き方に惹かれてきました。
なので、その方から、まるで私の楽してお金儲けがしたいという失敗を見透かされたようなことを言われて、一人心の中で苦笑してしまいました。
もしかして今までにも同じことを言われていたかもしれないけれど、今回はグサリと私の心に突き刺ささりました。
自分が懸命に働き、重い荷物も若い子に任さず、担いできた頚椎は、変形し手足が痺れてしまいました。
それでも、93になる今も、自分のことはほとんどを自分でするように努力を続けるこの方は、
痺れからくる手足の痛みがひどくて、薬もない、マッサージが一番の薬だと私たちの訪問を楽しみに待って下さっているのです。
この方には恥ずかしくて言えないような考えに取り憑かれた自分が本当に恥ずかしくなりました。
よこしまな考えは捨てて一生懸命真面目に働き続けようとしみじみ思いました。
額に汗するということは、楽して稼ぐということにはない尊いものがあるのかもしれません。
まだこの最中にいる私にはそれが何かあるのかないのかもはっきりとは見えていませんが、いつかこの答えを知る日が来るのでしょうか。
あと20年以上働くなんて!気が遠くなりそうですが…75歳まで現役で働けるかな?
働きたくないけど、働いてるかもしれないし、働きたいと願うようになるかもしれないし、働かざるを得ないかもしれないですね(~_~;)
息長く働かせてもらえますように、どうぞよろしくお願い致します。