「デイサービス行っても、することないから、ほとんどの人が机に突っ伏して寝てるか、上むいて寝たはるえ。
お金はろて、来てるのに、もったいないと思わへんのやろか。若い頃、汗水垂らして稼いだお金をあんな風に無駄にして。わたしはかなんから、自分で習字道具買って、そこで練習するようにしたんやで。
90にもなって生きがいのない人生を過ごすなんて、うちはいやや。もう先が短いのがわかってるやろ。時間がもったいないねん」
マッサージしながら患者さんが話してくださったことです。
90歳を超えた人の心がこんなにも豊かで、前向きで力強いことに驚きました。
その方が「老人らしくない」ことに気づいてはいたつもりでしたが、
知らず知らずに、「老人らしさ」をステレオタイプに考えていたことを反省しました。
歳を重ねると、どうしても、出来ないことも増えてきますが、くじけず自分を失わず、自分らしく生きていたら、多くを経験してきた世界というのは、本当に豊かな心が広がる世界なのかもしれませんね。
ただ、この豊かさを理解されず、「老人らしい世界」に追いやられることが悲しみの元なのかも知れないとも感じました。
施術しながら、私はただただ拝聴するだけなのですが、私が行くと元気になると言って下さいます。
それは、マッサージで身体が軽くなることだけでなく、自分のありのままを出せるということなのかなと思うのです。
つまり、豊かな心が広がっていても、それをわかってくれる人がいるということが、大いなる勇気の源となるのではないかと思うのです。
全く「老人らしく」なく、諦めないこの方の日常は、「老人らしい世界」を当てはめようとする「社会」との軋轢だらけなのは想像に難くありませんが、負けずに豊かな生を全うしてもらいたいと思います。