先週の金曜日のミーティングは、久しぶりにマッサージの実技の練習をしました。
わたしは、他の人が施術した患者さんの身体を触ると、ある程度はその人の”腕前”がわかります。
スタッフそれぞれに個性があり、その施術もそれぞれの個性が出てきますが、よくないクセが目立つようになってきたのでマッサージをしてもらったのです。
すると意外なことに(笑)前より指のあたりも探り方も上手になっているではありませんか!
それでも、患者さんの身体がうまく調整できないいくつかの点を指導しましたが、
「こんなうまくなってるのに、なんで患者さんにもっと返せないのかな?」
と尋ねると、一人のスタッフが
「患者さんは、正常な身体じゃないからです」
と教えてくれました。
とてもシンプルな答えだけど、なんだかそうなんだとしみじみ実感しました。
私は、この仕事をして24年目になりました。
この24年という歳月の中で、私は、簡単には経験できない、とても恵まれた環境の中で、臨床を積んでくることが出来ました。
この24年を知るお医者さんからも、こう言われました。
「安井さんは特別。安井さんみたいな経験をしている人はいない。」
特別な経験とは、介護保険導入前の医療と福祉が連携を必要とした自主的な取り組みの中で、私が訪問マッサージの仕事をスタートすることが出来たことです。
その中でチームで患者さんを支えることを学ばせていただきました。
それは、「在宅医療」を模索しながら、看護をサポートするために医師が動くという取り組みの一員に入れてもらい、個々の患者さんの神経内科的な説明から起こりうる症状の説明を受けながら訪問マッサージに関わるといった具合でした。
私の周りには、いつも様々な職種の大先輩がいらして、経験のない私の疑問や困り事の全てを受け入れて、そして助言して下さったように思います。(実際には、患者さんの困り事や愚痴を長い目で見ることも出来ず、騒ぎ立てた私を傷つけることなく、説いて大切な視点を教えて下さったのだと思います)
この中で、慢性期のリハビリテーションに必要なものは何か。マッサージ師の私に出来ることは何なのかを問い続けてきました。
半年後・一年後・三年後・五年後のゴール設定において最も大切なことは何なのか。
辛くて痛いのがリハビリという考えのもと、必死に取り組み、力尽きて寝たきりになった方を数多くみてきました。
また、全く機能訓練的な取り組みがなく、身体が小さく固まってしまい、寝返りやオムツ交換すらままならくなった方々も見てきました。
その中で、私の一番長い付き合いの患者さんは20年に及びます。
私の果たした役割は全く大きくありませんでした。しかし、僭越ながら私の存在なしには無理だったかもしれないとも思っています。
私がしたことは、本人が行う動作がしにくくならないよう出来る限りトレーナーとしての役割を果たすことでした。本人の意思がとても強く、こちらの考えや計画を受け入れられなかったのです。
私はこの方のやり方に合わすしかなかったのです。
ご本人の意思に沿って、優しく筋肉を整え、出来る動作を少し手伝って、一人でするより難易度の高いことをしてもらうを施術の基本にしてきました。
その結果、20年に渡る在宅生活を送っていらっしゃるのです。
もちろん私だけでなく、ヘルパー、訪問看護、デイサービス、往診、福祉用具、ケアマネジャー、それからご家族の熱心な介護があってのことですが、全ては、ご本人の意思を中心に動いてきたように思います、
私はこのケースから本当に大切なことをたくさん学びました。
筋肉を整えるということは、動作が軽く出来るようにするということです。
いつもの動作がより軽く出来ることで、自信が湧いて少し難しいことも出来ます。介助することでより安心な動作に繋がり、意欲が高まるし、また繰り返しすることで関節の状態がよりよくなり、施術後の日常生活動作により繋がっていくのです。
筋力を測ることも関節可動域を測ることもできませんが、筋肉をベストに保つことは、マッサージ師として何より大切なことです。
これが全てのリハビリの基本に繋がると信じています。
これは、私が、病院ではない、生きる場に必要な「リハビリ」として見つけてきたやり方です。
疾患や個々人の体型によりベストに保つべきポイントは、違ってきます。このポイントは、お医者さんや看護師さん、ケースワーカーさんなどに教わりながら覚えてきました。
ここが、私を「特別」にしている点かなと思います。
この「特別」を誰かに伝えていきたいといつも思ってはいますが、なかなかチャンスがありません。いつかこのチャンスがめぐってきて、私を育てて下さった全ての方にご恩返しが出来る日が来るといいなと思っています。
が、まずは自分の仕事をより良く取り組んで行きたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。