「私はアホの見本。私みたいなアホを相手してくれるおかげで、私は幸せに暮らせます」
と言って私を迎えて下さる患者さんがいらっしゃいます。
「アホの見本」⁇
どんなのをアホの見本というのだろうと思い描きます。総合的に考えて、
「あー。私のことですやん」と返事します。
「なんで~。よう言わはるわ。先生は賢いから、こんなアホの世話が出来るんですよ」
「みなさんの優しさのおかげで働けてるんですよ。ほんまにアホは私ですねん」
この方とは、こんな会話を行くたびごとに繰り返します。
認知症の人と話す時は、定番の会話を繰り返すのが本当に大切なのです。出来るだけ相槌がぞんざいにならないように工夫しながら、繰り返す会話は、患者さんに安心感を与えるように思います。
たまに患者さんのことが知りたくて、余計な質問をするとうまく答えられなくて、追い込んでしまい、イライラさせてしまうという失敗をします。
それでいつも安定の繰り返しになるように心がけています。
これは、繰り返しの会話の一部ですが、私は本当にそう思っています。
こんな風に上手に褒めて人と付き合えるこの方を本当に頭のいい方だと思っています。私はとてもこんな風に上手に人に挨拶ししたり、褒めたり出来ません。
話をしながら、こんな風に謙遜される、この方の人生の苦労に思いを馳せます。
この仕事を始めて、24年目になりました。
この24年間は、世間の常識も人との付き合い方も何も知らなかった私が、患者さんに一つ一つ教わりながら、数々の失敗を許してもらいながら過ごしてきた時間でした。
マッサージをしながらする話は、本当に徒然なるままで、今夜のおかずの話から、幼少期の話、人との付き合いの困難さなど多岐にわたりますが、どんな会話にも人生の重みを感じることができて、とても興味深いのです。
二十代からこのような話に触れることで、私の心はかつてない成長を遂げたように思っています。
そして、世間知らずの様々の無礼を許して下さる患者さんの寛大な心のおかげでここまで仕事を続けてくることが出来ました。
おかげで技術の向上・研鑽も出来てきたと思っています。
ですから、私の持てる技術を精一杯次の患者さんに生かすことが一番の恩返しだと思っています。
患者さんの話を聞きながら施術する時間が大好きです。この幸せな時間が続きますように。
精一杯頑張りたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。