いつもは元気印で冗談ばかり言ってみんなを和ませて下さる癌闘病中の患者さんが、足が痛くて歩けなくなってしまいました。
抗がん剤治療が始まり、その後しばらくすると足の痛みが増大するように見えていました。
おそらく抗がん剤の副作用で思うように動けず、筋力低下をきたし、結果的に下肢痛が起きているように思っていました。
でも、患者さんは、骨転移を心配されている様子でした。
先月の受診では、その可能性はなく、近くの整形外科を受診するように言われたということです。それでも消えない痛みに納得のいかないご様子で、痛みの訴えは日に日に大きくなり、自分で出来ていたこともできなくなってきたとおっしゃいます。
主治医の先生に再度痛みの消えないことを訴え、骨転移を心配していると言ったところ、痛みのあり方が、転移の出方とは違うと説明をして下さったそうです。
すると、その次の日から痛み止めを飲まなくても動けて、以前のように用事が出来るようになられました。
癌という病気の怖さは、その症状が命を奪うということだけでなく、転移・再発という恐怖が常につきまとうところなのかなと思います。
不安というのは、痛みを何倍にもさせてしまいます。
ことに高齢者の場合、痛みの原因と対処の仕方がわかれば、我慢出来る痛みは多くあるように思います。
痛みの治療というのは、時に、こういう心の中にある様々な感情をも理解し、その上で身体の異変に気付いていかないといけないのかなと考えます。
こんな時は、マッサージ師の私に出来ることは、ほとんどなくて、ただただ本人の気持ちに寄り添いながら、さするくらいしかできないこともあります。
自費治療なら、しばらくはお休み下さいと言われるところでしょう。
このような関わりは、計画的に目的意識的に関われる保険治療ならではの仕事かなとも思うわけです。でも、こういう目には見えない関わりの積み重ねこそが患者さんの明日の大きな力になっているように思うし、決まったマッサージ施術を行うよりうんと難しかったりするのです。
何はともあれ、「元気印」に少し元気が戻ってきてホッとしました。
もうしばらくお付き合いが続いていくことを祈りながら訪問を続けたいと思います。