誕生日プレゼントは鰻

「うなぎこうてきてくれたか?!」
昨日、私が部屋に入るなり、106歳の患者さんがこうおっしゃいます。

???私をヘルパーさんと間違えていらっしゃるのかと思いながら、私が困っていると、

「こうてきてくれへんかったんか」と続きます。

私は一週間前に、お誕生日のお祝いに、おはぎかお寿司をプレゼントすると言いました。
覚えてはいたのですが、お寿司といっても生ものは食べられないだろうし、箱寿司だけをお寿司屋さんで作ってもらおうと考え、昨日は間に合わず来週にしようと思っていました。

患者さんは明らかに先週の約束を鰻のプレゼントに変換して記憶し、待って下さっていたようで、そして鰻がないことを知り、落胆されていました。
「なんや…」

「ごめんなさい。覚えていたのですが、時間がなくて。明日かあさって持ってきます」

次の日は訪問予定にはありませんが、なんとかできるかなと頭の中で明日あさっての予定を考えていました。

「いつ?」と畳み掛けてきます。
「…明日きます」
「何時?」
「……うーんと…1時過ぎにきます」
「わかった」

年相応の認知症は ない…スゴイ…

なので今日は朝から何時にどこで鰻を買うかということを一番に考えて予定を組みました。

七条商店街にある鰻屋さんに行き、鰻の蒲焼を1尾買いました。

訪看さんに相談して、皮を残して身だけほぐせば大丈夫だろうということで、一度には食べられないので、残りは冷蔵庫に入れておくことにしました。
そして、お昼ごはん時のヘルパーさんの訪問に合わせて鰻を持って行きました。

私は患者さんが召し上がられるところが見たくて、ヘルパーさんの食事介助の横で身をほぐしました。

「3分の1くらいでいいかな」
「いや、半分くらいはいけるでしょ」とヘルパーさん。
「えー。そんなに」

美味しそうにもぐもぐ食べられます。
半分の鰻は、どんどん少なくなってきます。

「全部いけるんちゃう?」とヘルパーさん。
「本当に⁈」

1尾の鰻は、あっと言う間に106歳のお腹の中に消えて行きました!

「食べるってすごいですね」とヘルパーさん。
「こんなに美味しそうに食べてもらえて、買って来てよかったです」

「やっぱり花より団子ですね。お花は綺麗だけどねー」とヘルパーさん。

鰻屋さんで、鰻を買ったのは初めてなので、106歳の患者さんのお残りの鰻(の皮)は、家に持ち帰って、もう少し火を入れて夕飯に出しました。

匂いを嗅ぎつけた息子が
「今日うなぎ?」と聞いて来たので、
「うなぎの皮だけ」と答えて106歳の患者さんの話をしながら夕飯をいただきました。

美味しいものはやっぱり人を幸せにするんだなぁとしみじみ思いました。
来年のお誕生日のお祝いもまたできますように。


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